「日本のオンラインゲーム産業は失敗した」 今後は業界をあげてのマクロ的な戦略を
4Gamer:
ラグナロク RMT オンラインゲーム産業繋がりで聞いてしまいますが,現在の北米および日本のオンラインゲーム市場をどう分析されますか?
ウィ氏:
まず北米市場ですが,こちらも市場としてはちょっと厳しい状況ですね。MMORPGは,「World of Warcraft」(以下,WoW)の独占市場になってしまっていて,しばらくの間は,新たなタイトルが成功する可能性は極めて低いでしょう。
4Gamer:
北米市場というと,Nexonの「メイプルストーリー」が好調だと聞きますが。
ウィ氏:
MMORPG以外のジャンルであれば,成功の可能性はあります。これは,先ほどお話しした中国市場などと同じ傾向ですね。MMORPGは飽和(=WoWの寡占)してしまっているので,新たなニーズを探り当てないと成功しないという。
4Gamer:
要するに,新規タイトルで成功するためには,「既存のオンラインゲーマー」を相手にしていては駄目,という意味でしょうか?
ウィ氏:
そうですね。以前,私は北米のオンラインゲーマーの動向を調査したことがあるのですが,そこで分かったのは,北米のゲーマーは想像以上に保守的だ,ということです。
調査をする前,私はコンシューマ機のプレイヤーやPCゲームのプレイヤーが「どれだけオンラインゲームに移動したのだろうか?」と考えていました。あれだけの人気を誇るWoWが,各市場に与えた影響はどれほどのものだろうか? 大きな影響を与えていたのではないか?と考えたのですね。
けれど,蓋を開けてみれば,WoWは既存のMMO市場を食いつぶしていただけで,コンシューマ市場からプレイヤーが流れているだとか,そういう傾向はあまり大きくなかった 。同じPCプラットフォームという意味で,比較的親和性の高いと思われたFPSプレイヤーでさえ,WoWへ移動した形跡は見られない。
全世界で会員数1000万人突破がアナウンスされた「World of Warcraft」。オンラインサービス全般を見渡しても,有料でここまでの会員数を誇るサービスがほかにあるだろうか?
4Gamer:
確かに日本でも,いろいろなジャンルを遊ぶプレイヤーは少数だと感じます。MMORPGも遊んで,FPSも遊んで,RTSを遊ぶ……みたいな人はほとんど見ない。みんな,MMOならMMO,FPSならFPSばかりをメインに遊んでいる印象があります。
ウィ氏:
これは一種の経路依存だと思うのですが,人間,自分の慣れたものをやめて新しいものを選ぶ,ということはなかなかしないものなんですね。それがどんなに良いものであっても,新しいものには,チャレンジすらしない人がほとんどなのです。
4Gamer:
ゲームに限らず,それは真理かもしれませんね。
そういう意味ですと,日本市場はどうでしょうか? 正直なところ,いまいち伸び悩んでいるという印象が強いと思いますが。
ウィ氏:
RO RMTそうですね。実は最近,ちょうど日本のオンラインゲーム市場に関するレポートを書いたところなのですが,そこでの私の結論は,「日本のオンラインゲーム市場は厳しくなっている」というものでした。
4Gamer:
具体的にはどのように厳しいのでしょうか。あるいは何が原因なのでしょうか。
ウィ氏:
端的に言えば,市場の拡大が見込めない,ということでしょうか。新規プレイヤーの流入が目に見えて減っている,というのが所感です。
4Gamer:
それはどう分析しますか?
ウィ氏:
まずオンラインゲーム産業自体の内部的な要因で言えば,日本のオンラインゲーム産業がマクロ的な戦略に失敗した,というのが挙げられるかと思います。と言うのも,日本でオンラインゲームというと,RMTだとか詐欺だとか引きこもりだとか,いわゆるネガティブなイメージとセットで語られるものになっていますよね。メディアで取り上げられるときは,ほぼ間違いなく「事件」ないし「問題」がある場合だけですし。
4Gamer:
確かにメディアで取り上げられるのは,事件ばかりかもしれませんね。
ウィ氏:
要するに,オンラインゲームが健全である,悪いものではない,というイメージを作り出すことに,日本のオンラインゲーム産業は失敗してしまったと思うのです。そんな程度のことで!と思うかもしれません。けれど,こういう産業のイメージというのは,実はかなり重要なことなんですよ。甘く見てはいけないのです。
なぜなら,オンラインゲームが悪いものだ,というイメージが定着してしまうと,新規のプレイヤー,あるいはライトのプレイヤーというのが,入りづらい市場になってしまいます。親も子供に遊ばせようとしなくなりますし,結果として,市場の新陳代謝が衰えてしまうRMT。