ARADO WoTの魅力ってなんなの
アラド戦記 RMT 戦車ゲームにはアクション寄りの作品とリアリティ重視の作品があるが,World of Tanksは,その中間的な,セミリアルなものになっている。戦車そのものの設定,グラフィックスとも非常にリアルだが,マップは基本的に架空の土地であり,また歩兵や航空機といった実際の戦闘での重要な役割を果たす要素は出てこない。また,チームは同じ国の戦車で固める必要もなく,アメリカとイギリスの戦車が砲を並べて戦うといった編制も可能だ。
選択できる戦車は非常に多いが,WoTでは生産国によって大きく6つ(ソビエト,ドイツ,アメリカ,イギリス,フランス,中国),戦車の種類によって大きく5つ(重戦車,中戦車,軽戦車,駆逐戦車,自走砲)に分類される。車両名で言えば,ドイツの4号戦車やイギリスのチャーチルMk.I,ソビエトのIS重戦車にT-34,アメリカのシャーマン戦車など,一般にも名の通った有名どころは当然として,アメリカのT-57重戦車やソビエトのIS-4といった珍しい車両も大量にリストアップされている。
各戦車ごとに主砲の威力や視界の良さ,乗員や各種パーツ(エンジンや弾薬庫など)の位置,装甲厚などが細かく設定されており,命中した砲弾がどのような効果を及ぼすのかは,命中箇所や状況によって変化する。例えば履帯(無限軌道)を攻撃されれば履帯が切れて一時的に動けなくなることもあるし,主砲やエンジンに当たれば調子が悪くなることもある。さらに,車長や運転手など搭乗員が傷つくことで,戦車の機能を十分に発揮できなくなることさえある。
ARADO RMT砂丘を越えて敵戦車の砲塔が見える。砲塔正面の装甲は非常に硬いが,側面はさほどでもない。撃て!
装甲一つとっても,当たり所で影響は変わってくる。例えば,スペックシートに「車体の前面装甲80mm」とあったとしても,機銃口やドライバー用の覗き窓といった「装甲が薄い場所」に砲弾が命中すれば簡単に攻撃が貫通するし,仕組み上,当然装甲が80mm以上の防御力を持つ部分があったりもする。攻撃時はFPS視点に切り替えての砲撃も可能なので,敵の弱点を知っているかどうかによって結果に大きな差が出るのだ。つまり,反射神経だけではなく,それぞれの戦車に対する知識も重要になってくる。
WoTは,「オンリーワンの魅力」が光る作品だ。このレベルで戦車戦をシミュレートした多人数参加型のオンラインゲームは,世界広しといえどもWoTしかない。だがWoTが突出しているのは,それだけではない。
まず言っておきたいのは,WoTは必ずしも「遊んでいて不愉快なことがまったくない,愉快痛快なゲーム」ではないということだ。むしろ現実の戦車戦がそうであるように,ときに苦しく,ときに忍耐を求められ,ときに激しい無力感に襲われる。誰から攻撃されたのかも分からずに一発で撃破されることなどザラで,砲弾を命中させたのに敵戦車の装甲に弾かれて逆にやられるということも普通に起こる。フレンドリーファイア(同士討ち)は当然のごとくオンで,しかもゲームの基本がリスポーンなしのチームデスマッチなので,撃破されたらそこまで。そりゃ現実の戦車戦よりはゆるいだろうが,WoTの「現実」はかくも厳しいRMT。
機動力を活かして峠を越え,対岸にいる敵重戦車を側面から狙撃だ
貫通した砲弾が弾薬庫を直撃,爆発四散! もちろん自分がこうなることも
だがその厳しさは当然,自分だけが被るものではないし,状況が困難であるからこそ,工夫のしがいがある。工夫がうまくいかなかったときはその理由を考え,トライアンドエラーを繰り返すことで,撃破されるより撃破することが確実に増えていく。何をしていいのか分からない状況から,何をすればいいのかが見えるようになり,できなかったことが,できるようになる。
もちろん,戦場の常として,ときに理不尽な敗北はある(逆に,自分はまるで活躍できていないのに,チームは圧勝してしまったりすることもある)。WoT には結構な割合でランダム要素が絡んでくるので,自車が放った必殺の一撃が敵戦車の薄い装甲の上を滑り,敵が何気なく撃った一発がこちらの弾薬庫を直撃して爆発四散ということもあり得る。技術を積んだうえでの運の要素。このバランスの妙こそが,WoTの面白さを生み出しているのだ。