FF11 RMT[CEDEC 2009]「バイオハザード5」制作で見せたカプコンの超こだわりサウンド制作手法
FF11 RMT「バイオハザード」シリーズ/「デビル メイ クライ」シリーズ/「モンスターハンター」シリーズなど,数多くの作品をヒットさせ続けているカプコンのサウンドスタッフによるセッション,「カプコンが考えるサウンド制作方法の提案2 ~バイオハザード5~」がCEDEC 2009最終日に開催された。
ここでは,カプコンにおけるサウンド制作環境およびその実際の使用法を実践的に講義したセッションをレポートしよう。なお,セッションで使用した実例素材は,「バイオハザード5」(PlayStation 3 / Xbox 360 / PC)だ。講師は,カプコン クリエイティブ制作部サウンド制作室から,サウンドディレクターの岸 智也氏,同じくサウンドディレクターの鉢迫 渉氏,ミキシングエンジニアの瀧本和也氏の3人が務めた。
前回(2008年)は,カプコンのサウンド制作環境の解説が中心だったため,サウンド制作に直接携わっていない人でも興味深く聴けたセッションであったかもしれない。
今回は2008年のセッションを前提に,より密度の濃い踏み込んだ内容となった。正直に言って,そのままレポートするとサウンド制作者以外にはほとんど理解不能なレベルという,受講する側にもスキルが求められるものであったため,筆者なりの解説を加えた形でお伝えしていく。
FF11 RMT「スプリットスクリーンにおけるマルチリスナー」とは
まず,サウンドディレクターの岸 智也氏による「スプリットスクリーンにおけるマルチリスナー」からセッションはスタートした。
写真1
しょっぱなから頭に?マークが付きそうな題名だが,スプリットスクリーンとは,「バイオハザード5」におけるマルチプレイモードの一つ,モニター一つで2人協力プレイができる(=異なる2視点からの二つの映像を同時に表示する)画面分割マルチプレイのシステムだ(写真1)。
セッション中はとくに触れられていなかったが,通常このような環境で単純にサウンドを再生すると,両者の音のバランスが崩れ,なにがなんだかよく分からなくなってしまう。セッションでは,「MT Framework」によるその解決方法が説明された。
なお,すでにMT Frameworkという名前をご存じの人も多いだろうが,MT Frameworkはグラフィックスのみならず,サウンドを含めさまざまな機能をサポートする,マルチプラットフォーム対応の統合開発ソリューションである。本稿では,そのサウンド部分を取り上げて単にMT Frameworkと呼ぶ。
さて,同社が誇る自社製サウンド制作ツールであるMT Frameworkは,現在標準でサラウンド再生をサポートしている。5.1chサラウンドシステムの場合,その定位方法(音源が5.1chのどこから鳴るかということ)は,5本のサテライトスピーカーの合計が1.0となるとき0dB(最大出力)となる(写真2)。たとえば写真3のような場所で音源が鳴る場合は,Rスピーカー=0.25,Rsスピーカー=0.75になるわけだRMT。